えちぜん鉄道MC5001形 (旧京福電気鉄道モハ5001形)

ある程度資料が集まったので、今回はえちぜん鉄道MC5001形について。


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車両の歴史

えちぜん鉄道MC5001形は、1999年にえちぜん鉄道の前身である京福電気鉄道により、モハ5001形としてモハ5001・モハ5002の2両が製造されました。

 

モハ5002は、2001年の正面衝突事故でデビューからわずか1年半で廃車。この事故により、京福電気鉄道福井鉄道部が運行を継続できなくなったため、モハ5001も働く場所を失いました。

 

第3セクター会社のえちぜん鉄道によって、2003年に越前本線(勝山永平寺線)と三国芦原線の運行が再開されました。このとき、永平寺線は継承されずに廃線になりましたが、モハ5001は試運転で1度永平寺駅まで入線した実績があります。

 

その後は現在に至るまで、えちぜん鉄道の主力車両として活躍しています。

 

外観

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MC5001形は3扉の単行電車です。

扉は片開きで、両端の扉は車体中央に向かって開きます。中央の扉は、下り(勝山・三国港)方先頭部に向かって開きます。


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先頭部だけでもかなり多くの特徴があります。

くの字形の先頭部や、貫通扉に配置された前照灯は1990年代製の車両らしい特徴といえるでしょう。


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写真ではなかなか伝わりにくいと思いますが、貫通扉に設置された前照灯は黄色で、上部に設置されたものと色が異なります。

 

また、武庫川車両で製造されただけのことはあって、車番フォントやヘッドマークステーには阪神電車のカラーが色濃く現れています。


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方向幕は、勝山永平寺線の行き先は白地に黒文字、三国芦原線の行き先は黒地に白文字で書かれています。"福井"と"快速 福井"の方向幕は、勝山永平寺線三国芦原線の2種類が収録されています。

非営業列車の方向幕は白地に赤文字で、これらは既に引退したMC2201形も同仕様です。


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片開きの客用扉はおそらく阪神R車あたりの廃車発生品と思われます。


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下枠交差型のパンタグラフを下り方に1基搭載。

冷房装置は豊橋鉄道1900系(元名鉄5200系)からの流用品で、路面電車用のもの(三菱CU-127A)が3基搭載されています。


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台車はDT-21で、主電動機はMT46(ギア比 5.6)が4基搭載されています。

 

内装

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車内はオールロングシートで広々としています。

福井県内を見渡しても、現役のオールロングシート車両はMC5001の他に福井鉄道のモ880形とモ770形しか存在せず、鉄道線用車両としては唯一の存在です。


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乗務員室まわりは武庫川車両らしさが溢れています。座席や運賃箱などの有無こそあれ、5001形などにそっくりです。


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運賃表示器は、進行方向右前と左後ろの扉上に設置されています。


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乗務員室も阪神電車感に溢れています。運転台の配置も5001形などに似ています。


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方向幕指示器も阪神電車で使用されているものと同じコイト製のものが助士席側に設置されています。

 

 

運用

1両編成で運行されています。MC6101形と異なり、他の車両と連結して2両編成で運行されることはありません。


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休日には三国芦原線の快速列車に使用されることもあります。


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また、三国芦原線では福井鉄道との相互乗り入れを行っているため、田原町〜鷲塚針原ではLRVとも顔を合わせます。

 

 

 

 

 

ここからひとりごと

地方私鉄では珍しいことではありませんが、MC5001形はかなり乗り心地が悪い車両です。特に軌道の影響を受けやすく、地上線路ではかなり揺れます。一方で、2018年に完成した福井〜福井口付近の高架線路ではかなり揺れが抑えられています。

上り列車に乗るか、下り列車に乗るかで大きく印象が変わる面白い車両だと思っています。


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貫通扉に設置された黄色前照灯は点灯していることが珍しく、暗い時間帯や悪天候の状況でしか点灯している場面に遭遇したことがありません。クルマで言うところのフォグランプみたいなものでしょうか。

雨・雪がひどい日や、薄暮の時間帯を狙ってみると点灯しているところが見られるかもしれません。

 

 

高架線を走るLRV えちぜん鉄道L形”ki-bo(キーボ)”

2025年の春、広島電鉄が高架線で広島駅へ乗り入れることになっており、報道された際には「路面電車が高架線を走る!!」と話題になりました。

路面電車タイプの車両が高架線を走る光景は現在も筑豊電気鉄道で見ることができます。営業列車ではなく、高架線路の走行距離も短距離ではありますが、福井にも高架線を走る路面電車車両が存在することはご存知でしょうか。

今回はえちぜん鉄道L形”ki-bo(キーボ)”についての記事です。

 

 

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L形”ki-bo”は、2016年3月開始のえちぜん鉄道三国芦原線福井鉄道福武線の相互乗り入れ(フェニックス田原町ライン開業)に向けて2編成が製造されました。

3連接車体の福井鉄道F1000形”FUKURAM”とは異なり2連接車体です。乗り入れ先の車両と輸送力が異なる珍しいケースと言えるでしょう。

 

 

デザイン

 

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車体色は黄色で、愛くるしい表情をしています。

愛称の”ki-bo”は車体色の「黄色」や「希望」、「子供のかわいらしさ」から取られているとのこと。福井鉄道F1000形の愛称”FUKURAM”と合わせて「希望膨らむ」と読める、粋なネーミングです。

 

車内に目を向けてみても、黄色い座席が目立ちます。えちぜん鉄道のマークがあしらわれた鉄道線車両のシートとは異なるデザインです。

 

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座席生地は地元企業のセーレン製

 

 

運用

 

L形”ki-bo”の運用は、福井口車庫から出庫して鷲塚針原へ回送された後、鷲塚針原〜福武線前武生を直通急行として3往復して、鷲塚針原から福井口車庫へ回送されるというものです。

この1運用を2編成で担当しています。

 

福井口車庫から三国芦原線へは、福井口3番線で折り返します。福井口周辺は高架化されているため、このタイミングで高架線を走行します。

 

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高架線上では特急サンダーバードとの共演も見られた

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新幹線工事が進み、現在JR車両は見えなくなっている

 

福井口田原町は営業運転を行わない区間であるため、LRV用の低床ホームが設置されていません。

田原町駅も、営業運転で使用する2番線ではなく、低床ホームの無い3番線を使用します。

 

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出入庫の際、営業列車では走行しない福井口田原町を走行する


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鷲塚針原では行き止まり式の低床ホームに到着。3往復の急行運転を行います。

 

三国芦原線内では、臨時駅の仁愛グランド前、九頭竜川のそばにある中角を通過。これら2駅には低床ホームは設置されていません。

田原町駅では上下列車ともに2番線を使用します。

 

 

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直通運転に使用される両形式

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福武線内を走行するki-bo

福井鉄道福武線内では他の急行列車と同様、併用軌道区間は各駅に停車し、専用軌道区間では主要駅のみに停車する急行運転を行います。

福井城址大名町〜福井駅の通称”ヒゲ線”区間には入線しません。

 

夕方になると福武線は急行列車が増便されますが、2車体連接車体構造による輸送力不足は否めず、福井城址大名町では度々積み残しが発生する様子も見られます。

 

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福井鉄道線内では元名鉄車との離合も

 

3往復の運用を終えて鷲塚針原に到着すると、福井口車庫に入庫します。

 

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雪が舞う中走る入庫回送

日没後に高速走行するLRVはなかなかかっこいいです。

 

 

 

 

高架線からやって来たLRVが専用軌道から併用軌道を越えて再び専用軌道へ。

富山ライトレール(現・富山地方鉄道富山港線)が”トラムトレイン”ならフェニックス田原町ラインはトレイントラムトレイン

走行区間がかなり個性的なL形”ki-bo”。見た目もかわいらしいので、ぜひぜひ出庫から入庫まで追いかけてみてください。

 

 

 

余談

先ほど”見た目もかわいらしい”なんて言いましたが、日没後に後ろから見てみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

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子どもが見たら泣くぞこれ……

福井鉄道の元名鉄車 モ880形・モ770形の急行運転

名古屋鉄道の600V区間廃止の後、福井鉄道に譲渡されたモ880形・モ770形・モ800形。

モ800形2両は豊橋鉄道へ再譲渡されたものの、モ880形5編成とモ770形4編成は現在も福井鉄道福武線の主力車両として活躍しています。

 

福井鉄道は、国内の路面電車で唯一急行運転を行っている鉄道事業者です。

この急行運転には、LRVのF1000形“FUKURAM”・相互乗り入れを行うえちぜん鉄道のL形“ki-bo”だけではなく、福武線内では元名鉄車のモ880形・モ770形も使用されています。春季・秋季の臨時急行や突発代走では元シュトゥットガルト市電・とさでん交通のF10形735”レトラム”が使用されることもあります(超レアケース)。

宇都宮ライトレールが将来的に急行運転を行うことが発表されていますが、これはLRVによるものであり、LRV以外での急行運転は今後も福井鉄道のみで見られる光景であり続けるものと思われます。

 

 

名鉄600V区間全廃後の両形式の経歴

 

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三十八社駅で離合するモ770形772-773(左)とモ880形882-883(右)


モ770形は、揖斐線での急行運転に対応するため高速走行が可能な性能を有していましたが、モ880形は専ら美濃町・田神線用であったため、福井鉄道移籍の際に高速走行に対応する改造工事を受けています。

2016年3月に開始されたえちぜん鉄道三国芦原線との相互直通運転(フェニックス田原町ライン)では、モ770形772-773のみがえちぜん鉄道仕様の無線装置を設置されたうえで予備車とされたものの、2017年度にF1003・F1004が直通運転に対応したことでお役御免。この無線装置は取り外され、現在は福武線内のみで使用されています。

 

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えちぜん鉄道用の無線装置を装備していたモ773

 



運用

現在の福武線は、昼間時間帯は30分間隔の普通列車と、1時間間隔の直通急行のパターンダイヤです。直通急行は3運用で、F1000形が2運用、えちぜん鉄道L形が1運用を受け持っています。

この3運用に関してはLRVの固定運用です。

 

要するに、元名鉄車は日中時間帯には急行運用に入りません(入れません)

 

また、朝のラッシュ時間帯に設定される下り急行列車2本・上り急行列車1本に関しても、F1000形の固定運用となっていますが、線内で完結する運用のため、F1000形が検査などで運用を外れる際には元名鉄車が運用入りします。

↑越前武生7:05発・田原町8:00発が急行(休日・年末年始運休)

↑越前武生7:21発が急行

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朝ラッシュ時間帯の上り急行列車

 

家路につく学生が増える夕ラッシュ時間帯には、14~17時台(上り列車は15~18時代)には毎時1本ずつ急行列車が増便されます。

基本的には元名鉄車2編成が越前武生から田原町まで2往復を急行運転します。

途中の三十八社駅では、急行通過駅でありながらこれら2編成が離合します。まず上り急行列車が入線し、運転停車。下り急行列車が一線スルー構造の下り線を高速で通過した後、上り急行列車が出発します。

現在、元名鉄車による急行列車どうしの離合が見られるのは三十八社での1日3回のみです。

前武生駅に留置されている車両がこの運用に入ることが多いものの、稀に北府からの送り込みを見ることもできます。

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北府からの送り込み回送

 

区間急行

 福井鉄道では、路面電車としては珍しく、区間急行という列車種別が設定されています。福井駅始発で、神明まで急行運転を行い、終点の越前武生まで各駅に停車します。

基本的にモ770形が使用されているようですが、稀にモ880形も運用入りしています。

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福井駅を出発する区間急行列車(モ880形)

 

 

 

福井鉄道の運用について、公式TwitterでLRVの運用が公開されているため、それ以外の列車はすべてモ880形かモ770形であると容易に判断することができます。

お目当ての列車がお目当ての運用に入らなければ、予定を変更してえちぜん鉄道北陸本線越美北線に行ってみたり、観光地に行ったりしてもいいですね。

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